【書評】日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか?
本ブログ初の書評コーナーです。
Q.突然ですが、今日5/1は何の日でしょうか?
→G.W.の谷間で、働くのが嫌になる日
そうそう…って個人的気持ちを答えてもらっても…
おや??でも、答えにつながるヒントがありますね。
ヒントは「働く」
といっても、まだすこし難しい問題ですね。
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正解は…メーデー
国際的な労働者の祭典・万国労働者団結の日
1886年にシカゴの労働者が「8時間労働制」を求めてストやデモを行ったことを記念して定められたもの。今日でも、労働組合がこの日に合わせデモ等をやっています。
労働者の日に、労働関係の新書を買って書評を書く私は変わり者ですね。
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枕が長くなりましたが、著者紹介から 今野 晴貴 さん
<こう見えても20代> <8万部突破の代表的著作>
・1983年生まれ、仙台市出身
・NPO法人POSSE代表。一橋大学大学院博士課程。年間600件を超える労働相談に関わり、仙台市と共同で被災者支援事業を行なっています。@konno_haruki (参照:twitterプロフ)
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実は、人生さまよい中の私。労働基準監督官(*)試験を受けるため、お勉強中の身でございます。本書のなかで、監督官の仕事内容とその限界について語られている部分があるので、そこを中心にレビューしましょう。
(*)違法労働をしている企業を取り締まるお役人、労基署にいます。
◆労働の大前提は契約にあり
働く人はみな、入社時に労働契約を結んでいます。
えっ!そんなの知らんぞ、という方…就業規則というパッケージ型の規則によって労働条件が決まっていることが多いでしょう。
下手すると40年近く働くかもしれない企業との重要な契約さえ知らない、これが、日本人労働者の労働法意識の実態です。
残業代が支払われない、ひどいパワハラを受けている等、労働問題が起こってようやく、労働法・労働契約という存在が前面に出てくるのです。
◆監督官のお仕事とその限界
労働問題に関係するお役所、それが労働基準監督署(労基署)
そんなマイナーなお役所の仕事は何なのでしょうか?
実は、労働基準監督署は労働問題を解決する役所ではありません。
労働基準法などの最低基準を守るために違法企業を罰すること、
これが監督官の役目です。
・残業代を含む賃金未払い企業に対して、指導・勧告をする
・労働災害が発生しないように未然に防ぐ
悪質な企業に対しては警察のように、逮捕・送検することもあります。
でも、カバー範囲が意外に狭いのがネックです。
・解雇問題の際に、未払い賃金支払い勧告等はできるものの、解雇無効の訴えは労働者本人が裁判に訴えないといけない。
そして、最大のネック。人が足りない。
東京23区で現場で活動する監督官が139人。
単純計算で監督官1人あたりの事業所数は3000!
少ない人数で効果的な監督を行うにはどうしても大企業中心の監督にならざるを得ないという構造的悩みを抱えています。
◆まともな労働に向けて前進するには ~労働お役人予備軍の立場から~
監督官以外に、別の立場で労働者のサポーターとなり得る人は多くいます。NPO、労働専門弁護士、社労士、都道府県の労働相談窓口、労働組合。人によって能力・意欲の差はあるものの、労働問題が顕在化している今、少しづつではあるものの、良心的なサポーターが増えているとのことです。
気をつけたいのは、監督官などはあくまで「サポーター」であるということです。
困っている労働者が「プレーヤー」。
監督官の仕事場面で、サビ残問題について「勤務時間の記録をつけなさい!」 といったように監督官が労働者にお願いをする場面があります。
そう、問題解決のために一義的に動くのは、労働者本人なのです。
また筆者も指摘していることですが、このような場面で自律的に動ける「強い」労働者を助けることは容易いが、そうではない「ふつうの」 労働者に対していかに助言し、絶妙なバランスで背中を押してあげることができるか。
それこそが、労働サポーターとして真価が問われる場面だと感じました。
そして、労働法教育も重要です。労働問題になる前に、知識と対応方法を知っておくことが何より大切です。地方労働局によっては学生に対して、 労働法セミナーを実施しているところもあると聞きます。
少しだけ研修の仕事をかじった人間としては、私に出来ることがあるのではと思う分野です。
と偉そうに言っていますが、試験に通らないとお話にならないので、あと1か月、必死に勉強しないとですね。
◆おわりに
今野さんとは直でお話しをさせていただいたこともありますが、彼のすごいところは、聡明なだけでなく、社会を変えることを最重要視している点だと思っています。
「ワタミ叩きではブラック企業はなくならない。社会問題化しないとダメ」
「ブラック企業撲滅のためには、共産党でも維新の会でも乗り込む所存」
というのが、彼のスタンスです。清濁併せのむ研究者 (兼) 運動家です。
そんな本書、はたらく人・はたらく準備中の人・はたらけなくなった人、日本の労働に関係する人にとって必読の書です。(誇張ではないです。)
!!ばっ!!<おしまいの合図>!!ばっ!!