【お勉強】丹羽 元中国大使に学ぶ~外交とメンツ~
私は日経新聞の電子版を購読している。
2日に1回くらい日経新聞社からメールが届くのだが、そのなかに無料セミナーの募集があったので、是非お話を聞きたいと思っていた丹羽宇一郎 元伊藤忠商事会長・前中国大使に応募した次第。
月に4000円払っているんだから、少しでも元をとらんかな精神である。
◆近くで見た丹羽さん
最近はメディアにあまり登場されないので、中国問題で滅入ってしまったのかと思いきや、なかなかどうして元気はつらつな姿勢で登壇。
文字化された著書と全く同じように、分かりやすく率直な話しぶり。まさに一言居士。おまけにウケもしっかりとっていた。さすが商社で辣腕をふるっていただけある。
◆日中外交 ~こじらせた「メンツ」~
メンツ=体面、面目。「―を立てる」「―がつぶれる」「―にかかわる」
もともと中国語で、それが日本に伝来した言葉だそうだ。
そういう由来からかどうかは分からないが、日中外交には特にメンツが大事だという趣旨のことを丹羽さんは語っていた。
例えば…
・これからの日中関係の在り方(尖閣問題)
→ICJ(国際司法裁判所)or 話し合い or 戦争
この中で、戦争は絶対に避けなければならないのは当然、外交の使命。
しかし、現状では日中首脳会談でさえ、うまくセッティングできていない。なぜ話し合いができないかというと、メンツを互いに潰されたくないというプレッシャーがあるからだという。
日本:強硬策でなければ、中国嫌いな国民やセンセーショナルな報道を好むメディアから弱腰外交か!との非難が飛ぶ。実際に丹羽さんが尖閣国有化に反対したときに、心ないバッシングを受けていたことを私もよく覚えている。
中国:日本と同じような要因に加え、軍部と政府の力関係も考慮にいれる必要がある。最高軍事指導機関である中央軍事委員会のトップは政権トップが担ってはいるものの、文民統制とはいかず、軍部の顔色を窺いながら外交政策をとらなければいけない。たとえ、政権トップが親日的であろうと、政治と軍部の力関係によって、強硬策を取らざるを得ないという事情もあるとのことだ。
どちらも自国の「メンツ」にこだわると、仲良く話し合いなんかできないというわけ。そしてたちの悪いことに、日本の政治家には先ほど述べたような中国特有の事情を知らないし、知ろうともしない者が少なくない。
石原前都知事は最たるものだろう。国有化を進めると緊張が高まって、いいことなんか一つもないというリアリストの視点を欠いたまま、イデオロギー先行で尖閣国有化をやってしまった。そして、この現状である。
◆丹羽さんのスタンス ~リアリズムと相手尊重~
彼のスタンスで、絶対に譲れない一線は戦争はさせないということ。
外交責任者としては当然である。そのためには、尖閣諸島周辺で中国がけしかけようとも、言うべきことはいうが、尖閣国有化のような極端に相手の「メンツ」を潰すようなことには反対する。
彼は言う。尖閣問題を棚上げ=おやすみタイムにして何かまずいことがあるのかと。リアリズムに基づいた、率直な考えである。
恐らく、強硬派は中国の侵略に屈するのか!と反論するだろう。だが、どちらが日本の将来のことを考えているといえるか。それは前者であろうと私は思う。
相手の立場を考えつつ、自分を主張する。それがコミュニケーションの基本だ。外交こそその最たるもの。相手である中国事情を知ろうともせずに、自分を主張すると、ロクなことにならないのは戦前の歴史をひもとくまでもないだろう。
◆所感
だれかがネット上でつぶやいていたのだが、
「これからの日中関係は歴史上初めて対等な関係になれるチャンス」だと。
近代以前、朝貢国とするなど中国は日本を下に見ていた。
明治以降に日本は中国を逆転。満州事変そして日中戦争をおこした。
戦後も日本は中国に対し、優位な立場にあったが、中国は再度政治経済で強大なパワーをもった。その力は危険かもしれないが、経済面での中国との関係は非常に結びつきが強い。
これからは、個人が何と思おうと中国とうまく付き合っていかねばならない。
仲良くなくていい。うまく付き合うのだ。
そのようなリアリズムに立ったうえで、外交を見つめていかねばならないと思った。
お土産で、丹羽さんの新著をタダで頂いた。たぶん発売前。(ラッキー!)
!!ばっ!!<おしまいの合図>!!ばっ!!