yamachan blog  (社会派うどん人の日常)

コシのつよいうどんのような、歯ごたえのある記事をお届けします。

なぜスポーツ代表選考は揉めるのか

中学高校の6年間は卓球部だった私。今はラケットを握ることはほとんどないのだが、東京に住んでいた頃は全日本選手権を見にいくほど卓球熱はまだ残っている。

 

今回は卓球界の揉め事から、話を広げていこうと思う。

【卓球】ミキハウス社長「不透明選考」で協会に直談判!佳純・早矢香組が連覇で落選 

卓球の世界選手権(4月26日開幕、中国・蘇州)の代表選考に関し、選考方法等の見直しを求めていたミキハウスの木村皓一社長(69)が18日、都内で日本卓球協会の星野一朗強化本部長(59)と会談を行い改善を直接申し入れた。代表選考では1月の全日本選手権ダブルス優勝の石川佳純(21)=全農=、平野早矢香(29)=ミキハウス=が落選。不透明な部分も多く、木村社長は疑問を投げかけていた。今回の話し合いを受け、3月上旬にも意見書を日本協会に提出する。

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卓球界のエース石川佳純とベテラン平野早矢香。2人ともに実績十分。この2人のダブルスは全日本選手権ダブルスで優勝したにもかかわらず、2枠ある世界選手権のダブルス代表から外れてしまった。

全日本選手権ダブルスの優勝は、世界選手権代表の内定条件とまではなっておらず、世界大会ではこのペア以上の成績を収めているものが複数組いたため、2人がダブルスの代表として漏れたというのが卓球協会の説明。ただ、世界選手権代表に選ばれた2組のうち1組は全日本選手権に欠場、もう1組は石川・平野組に全日本選手権で破れているのが、ややこしいところ。

今後は、石川・平野選手が所属する企業の社長が選考の透明化を求めて意見書を提出する予定とのこと。なんだか一大事に発展しつつある。

 

 

スポーツの代表選考が揉めるのはこれに始まったことではない。一番広く知られている代表選考トラブルは、マラソン競技であろう。 

1988年ソウルオリンピック男子マラソンの代表選考。有力選手が集まった福岡国際マラソンが事実上の選考レースと考えられていたが、日本マラソン界のエース、瀬古利彦が左足首の剥離骨折で欠場。結果は、1位中山竹通(2時間08分18秒)、2位新宅雅也(2時間10分34秒)。日本陸連は瀬古に配慮し、中山と新宅を内定とした。瀬古は翌年のびわ湖毎日マラソンを独走ながら2時間12分41秒という平凡なタイムで優勝し、3人目に滑り込んだ。瀬古の福岡国際欠場を知った中山の「僕ならはってでも出る」発言*1とともに、難航した選考事例として知られる。*2

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 他にも、1992年バルセロナ五輪選考で落選した松野明美選手、2004年アテネ五輪で落選した高橋尚子選手を巡る騒動など、マラソン五輪代表選考は何度も揉めた歴史がある。

 

マラソンの五輪代表選考は、直近の世界選手権の成績+国内選考3レースの成績を考慮して、最大3人の代表を決定する方式となっている。しかし、気候やコース特性、レース展開がそれぞれ異なるので、単純なタイム比較で決めることは困難である。そして、過去の実績のある選手と経験は浅いが直近のタイムがいい選手とが選考のボーダーライン上に載った時には、揉め事となるケースが多い。

 

 

卓球、マラソン……おや、両方とも自分が取り組んだスポーツではないか…

残るは大学時代にやっていたボート競技はどうか…??

思い返すと、ボート競技でも直近のロンドン五輪代表選考で揉めていた。しかも日本スポーツ仲裁機構(JSAA)への提訴というオマケ付き。

[ボート]第一人者の武田がスポーツ仲裁機構に申立五輪予選の代表選考に異議(現代ビジネス 2012年2月4日) 

日本男子ボート界の第1人者で、1996年のアトランタ五輪から4大会連続で五輪出場を果たしている武田大作(ダイキ)が、ロンドン五輪アジア大陸予選会(4月、韓国)に臨む軽量級ダブルスカルの代表クルーから落選し、補漕となった結果を不服として、日本スポーツ仲裁機構(JSAA)に申立を行った。申立では日本ボート協会に今回の代表クルー内定取り消しと、選考レースのタイムを公表した上での再決定を求めている。3日、都内の岸記念体育会館で会見を開いた武田は、「タイムで選ぶという基準が最初に示されながら、最後に変更されたのは納得がいかない」と申立に至った理由を説明した。

 日本スポーツ仲裁機構はこの選考に対して「著しく合理性を欠く」として、日本ボート協会に選考結果の取り消しを命じた。その後の再選考レースを経て武田組は代表に選ばれ、2012年ロンドン五輪では12位の結果を残した。

 

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なぜ、スポーツ代表選考は揉めるのか?

ここで一般的に出される解は、選考基準の曖昧さである。確かに、取りあげた3例は、選考基準に曖昧さが残されており、それがゴタゴタの一因になっていることは間違いないだろう。

 

しかし、曖昧でない選考基準をつくることはそもそも可能なのか?水泳のように条件が一定に保たれやすいタイム競技であればそれも可能であろうが、同じタイムレースであるマラソンでさえ、諸条件は一定でない。

そこで出てくるのが、選考会を1大会に絞る案である。*31発勝負であることが事前に選手に通知され、選手がそれに納得していれば揉め事は生じないという考えである。

だが、私はその考えには穴があると思う。1大会に絞った結果、有力選手が欠場したり良い結果が残せず落選した場合、選手は納得するかもしれないが、マスメディアを通して世論が反発するケースが大いに考えられる。2004年アテネ五輪女子マラソンでの高橋選手落選はまさにそのケースであった。結果的には野口選手の金メダルをはじめ、残る2選手も入賞という素晴らしい結果であったが、この結果が芳しくなかった時にどのような事態が起こっていたか想像するとよいだろう。

 

選手・そして世論の反発に対して、選考側が納得のいく説明ができるか、実はこれが一番の難題なのかもしれない。選考方法に100%の正解などなく、いかに納得してもらえるかがポイントとなる。

これは会社の人事評価と似ている。

ただ、会社の人事評価と違う点は、大きな大会の選考は数年に1回、しかも選手としてのピークは短い。落選したらもう二度と同じ舞台には立てないかもしれない。だからこそ選手側としては納得しきれない思いは強くなる。また、選手だけでなく、選手を応援するファンの人たちも視野に入れなければならないという面倒さもあるといえるだろう。

 

いや〜評価制度って難しいですね。(平凡な感想)

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今週末は東京マラソン。五輪選考レースではないが、世界陸上の選考レースになっている。選考委員が困惑するくらい好結果を残す選手が続出することを期待して、自分はテレビ観戦といきましょうかね。 

 

*1:瀬古欠場の感想を問われたのに対して「自分なら這ってでも出ますけどね」と苦笑混じりに答えたというのが真相らしい。

*2:一発選考は無理…波乱の落選、それが実力(YOMIURI ONLINE 2014年8月1日 )

*3:アメリカの陸上競技は一発勝負であることがよく知られている。ウサイン・ボルトでも一発勝負で失敗すれば落選。ただ、これはアメリカ陸上競技の選手層が飛び抜けて分厚いからこそできる選考方法なのかもしれないと私は思う。