大ヒットドラマ「逃げ恥」と人事管理モチベーション理論
昨年大ヒットしたドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」
略して「逃げ恥」。
数年来のガッキーファンの私は、当然全部視聴。
とは言ってもリアルタイムでは1〜3話(ハグの日手前の回)、10話(プロポーズの回)、11話(最終回)しか見ることができなかった。ハグの日あたりでの展開があまりにむず痒く、どうにも見る気が削がれてしまったためである。
しかし、普段漫画など買わない両親がコミック版を全巻揃えるほどどハマりしていることが判明したため、途中から視聴復帰し、帰省時に録画視聴と漫画読了した次第。
ドラマ見視聴の方は、まずあらすじをチェック ↓ ↓ ↓
はじめに|TBSテレビ:火曜ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』
基本的には、”ガッキー可愛すぎる、星野源は爆発しろ"という感情ばかり募る、非常に罪深いドラマなのであるが、労働問題につながるようなトピックもドラマにふんだんに盛り込まれている。
特に主婦の労働対価問題を取り上げた第11話(最終回)冒頭のみくりさんの台詞が非常に気になったので、紹介しようと思う。
最終回のあらすじ ↓ ↓ ↓
あらすじ|TBSテレビ:火曜ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』
以下、ドラマ台詞の引用
みくり(ガッキー): ずっと考えていたんです。主婦の労働の対価について。それが、最低賃金で働くことで見えてきたんです。
平匡(星野源):すみません、話がよく・・・
みくり: 私、副業しているんです。
平匡: はい?
みくり: やっさんの商店街の青空市の手伝いを頼まれて。時給は930円、横浜市の最低賃金です。黙っていてごめんなさい。
平匡: なぜ、黙って・・
みくり: 短時間の軽いお手伝いのつもりだったし、周りは男の人ばかりで、平匡さんは嫌がるかなと思って。ごめんなさい。
平匡: かなり衝撃的ですが(しばし沈黙)自分もリストラされたことを黙っていたのでおあいこです。
みくり: 時給2000円なら耐えられるって仕事も最低賃金であれば耐えられない場合ってあると思うんです。
平匡: 金額以上の働きを求められても・・ということでしょうか
みくり: はい。そこがモヤモヤポイントでした。つまり、こういうことです。(テロップを出す)
みくり: 結婚して専業主婦になるということは、生活費の保障、つまり最低賃金を受け取ることとイコールだと思うんです。でも、最低賃金はあくまで最低賃金。食わせてやっているんだから黙って働けと言われても限界があります。
平匡: でも、そんなに横暴な雇用主ばかりというわけでもないでしょう。
みくり: はい。いい雇用主のもとでストレスもトラブルもなく働けるのであれば最低賃金でもいいのかもしれません。
平匡: つまり、雇用主次第であると。
みくり: 一般企業なら人が大勢いて人事異動もあります。昇給や賞与など客観的に従業員を評価するシステムもある。でも、夫婦の場合夫から評価されなければ妻は誰からも評価されない。つまり現状の専業主婦の労働の対価はこの基本給+雇用主の評価(愛情)ということになります。
平匡:しかし、愛情は数値化できませんね。
みくり: そうなんです。極めて不安定な要素なんです。雇用主の気まぐれでいつでもゼロになりうる。
平匡: その場合最低賃金労働のみになってしまうわけですね。
みくり: 労働時間の上限もないんです。下手をすればブラック企業になりかねません。この労働環境でやっていけるのか不安があります。
いやあ・・・これはドラマであってしかも演者がガッキーだから許されているようなもので、プロポーズ保留直後にこんなこと言い出すような人、相当ヤバイよ。。(あまり笑えない('A`))
しかも、自分から「男性の愛情の都合のいいところだけ欲しい」といってハグの日を創設して以来、好きの搾取*1をしていたのはお前だろ!!ふざけるな!という野暮なツッコミは置いておいてと・・・
◯みくりさん理論
みくりさんの先ほどの発言を箇条書きにまとめてみよう
・平匡さんと雇用関係にあれば時給2,000円という金銭的対価をもらえる。
・平匡さんと婚姻関係を結べば雇用関係は解消され、数字に表れる金銭対価はもらえなくなる。
・結婚して専業主婦になるということは、生活費の保障、つまり最低賃金を受け取ることとイコール。
・専業主婦の労働の対価は最低賃金+夫からの評価(愛情)であるが、夫からの愛情は数値化不能であり不安定。
◯ハーズバーグ理論(衛生要因と動機付け要因)
私は閃いた。これは人事管理の基礎理論であるハーズバーグ理論(衛生要因と動機付け要因)に関係するではないか!!
↓ ↓ ↓
「不満足要因」とは、会社方針や職場環境、給与、対人関係などを指します。これらの要因が不十分なときに、人は不満足と感じます(ただし、十分であっても満足感をもたらすものとは言えません)。不満足要因は「衛生要因」とも呼ばれています。
一方、「満足要因」とは、仕事内容、達成感、承認、責任、昇進、成長の可能性などを指します。これらの要因が十分であるときに、人は意欲が高まります。(ただし、不十分であっても不満の原因にはなりません)。満足要因が満されることで、積極的な動機付けが行われ、やる気が増幅することから、「動機付け要因」と呼ばれています。
満足な(動機付け要因が満たされている)状態と、不満ではない(衛生要因が満たされている)状態とはまったく異質なものです。やる気を引き出すには、衛生要因が満たされるだけでは足りず、動機付け要因が働く必要があります。一方、動機付け要因だけを増やしても、衛生要因が満たされていなければ、従業員の不満が高まっていきます。
◯みくりさんの状況をハーズバーグ理論に当てはめる
(1)雇用関係ープロポーズ前
・不満足要因: 会社方針や職場環境、給与、対人関係
→時給2,000円、残業代もきちんと出る、雇用主として平匡さんは信頼できる。
→不満足要因はほぼない
・満足要因:仕事内容、達成感、承認、責任、昇進、成長の可能性
→平匡さんは不器用ながらもきちんとありがとうと言ってくれる誠実な人であり、モチベーションの源泉になっている。昇進や成長の機会はない。
→満足要因のリソースはやや少ない
トータルで見ると、一般企業に勤めるよりも満足要因は少ないが、不満足要因はほぼないため、みくりさんは居心地よく働くことができていたといえよう。
(2)婚姻関係ープロポーズを受けたと仮定
・不満足要因: 会社方針や職場環境、給与、対人関係
→金銭的対価はもらえなくなる*2
→不満足要因が増大する。
・満足要因:仕事内容、達成感、承認、責任、昇進、成長の可能性
→承認:平匡さんは愛情表現が非常に不器用だが雇用主だから仕方ないと割り切っていた。しかし、雇用主でなく夫だとするとヤキモキする。
→満足要因のリソースはやや少ないまま。
トータルで見ると、雇用関係の時に得られていた金銭対価という分かりやすい評価がなくなり、しかも夫としての平匡さんは承認の与え方が下手。破局リスク増大???
小賢しい(と自分で思っていた)みくりさんは頭の中でハーズバーグ理論を自分に当てはめたのだろうなあ。はてさて、この後二人はうまくいくのだろうか。
ドラマの結末は見届けたが、コミック版の結末*3はまだチェックできていないので非常に気になるのであった。