yamachan blog  (社会派うどん人の日常)

コシのつよいうどんのような、歯ごたえのある記事をお届けします。

本屋さん探検隊~新書出版のなぞを追え~

実はわたくし、密かにALL about 著者養成講座に通っている。

コレ→http://allabout.co.jp/jibun/class/c-010/

動機は、料金が格安だったこと、ウケるブログを書きたい、ただそれだけのために毎週1回朝6時前に早起きして会場の品川まで行っている。

いきなり本を書けるとは全く思っていないので、ブログで修業の日々。

 

 

では本題。

前回の講義で「本屋を探索して気付いたことを何でもメモしてこい」という非常にアバウトな宿題が出たので、行きつけの新宿Book1st.を探検してきた次第。

 

新書コーナーで、”自分が本を出すとしたら?”という目線を持って、気付いたことをメモ書きとして残しておく。

 

 

◆新書の売り出し方ランク付け

>お薦め売れ筋本のコーナー

有名人が書いているような確実に売れる本と本当に売れている本を陳列する棚。

1種類につき15~30冊程度の陳列

大々的に宣伝していたのは

 ・池上彰:知らないと恥をかく世界の大問題4 http://amzn.to/13fq5wi

 ・林真理子:野心のすすめ http://amzn.to/11lJZpg

 ・荒木飛呂彦荒木飛呂彦の超偏愛! 映画の掟 http://amzn.to/ZnItCn

 

世間的には無名の若者が出した本で、陳列されていたのはこの2冊のみ

 ・今野晴貴ブラック企業 http://amzn.to/17hXlav

 ・鈴木 翔:教室内カースト http://amzn.to/14nnIVP

前者、後者ともに公称8万部と堅い内容の新書としては異例の売れ行き。

逆に言うと無名の新人の本はここまで売れないと、売れ筋コーナーに陳列されないということ。

 

>新刊本のコーナー

新刊本が約100種類ほど陳列されている。1種類につき3~4冊の陳列。ここから売れ筋本コーナーに行く書籍は一握りだろう。

 

>通常書棚

ほとんどの本は1冊しか陳列されない。PUSHされている本は平積みもしくは表紙が見えるように立てかける形で複数冊置かれている。売れ筋本コーナーにある本は通常書棚にも置かれていることがほとんど。

 

 

◆教室内カースト:部数の怪?!

〇〇万部突破!といった煽り文句を見たことがある人は多いだろう。部数は宣伝にもってこいで、売れている=いい本だと思って買う人も少なくない。

しかしこの部数は実際に売れた本の数ではない。出版業界の慣行として、カウントされているのは版元が刷った数。本が売れようと売れまいと、部数=刷った数。

 

少し出版業界事情に詳しい人なら知っていることだろうが、探検をしている最中に部数に関して変なことに気づいてしまったのである。

 

標的はこの本。

 f:id:world_end_1999:20130603172743j:plain

 

先ほども話題に出たこの本。自分も昨年末に買った。正直言ってイマイチ。古市憲寿さんの研究仲間らしいのだが、彼に輪をかけて分析が雑。研究者の卵としても…なんでこんな本を買ってしまったのかと… おっと、disるのは本題ではない。

 

この本、「売れ筋コーナー」ではカバーには5万部突破という文字が施されるとともに、朝日新聞書評の縮小コピーがポップアピールされていた。

だがしかし、「通常棚」に平積みされた本のカバーには8万部突破と言う文字が…

 

…どういうことや… 奥付を確認!

 

時系列で示すと

2012/12/14  第1刷

2013/03/17  朝日新聞に書評が載る

2013/04/05  第7刷  5万部と公表

2013/04/25  第8刷  8万部と公表

 

最初は「部数サバ読んでるやろ?!」と疑った。

一気に3万部増刷とか狂気の沙汰。そもそも物理的にそのペースでの増刷は可能なのか?

念のために別の出版社に勤める友人に聞いてみたところ、「物理的には可能だが、普通はそんな無茶な増刷はしない」とのこと。

 

発行部数がサバを読んでいない数値だと仮定すると、なぜ光文社は、短期間に大増刷をしたのか?売れる見込みはあったのか?

一つの仮説として、ドラマとのタイアップ効果を狙ったのではないかと考えられる。この本には新聞の書評とは別の種類のポップが据えられていたが、それにはこんな写真が貼ってあった。

f:id:world_end_1999:20130603175429j:plain

 

私はこのドラマを見ていないので、教室内カーストとこのドラマの関連性がどこにあるのかよく分からない。全く関連がないということはなかろう。調べてみるとこのドラマは初回視聴率14.7%と、近年にしては中の上レベルの視聴率を叩きだしたようだ。

だが、このドラマの視聴者と「教室内カースト」の読者層が被っているようにも思えないため、タイアップ効果は限定的だろう。他の書店を確認していないので何とも言えないが、どこの本屋でも同じ売り出し方をしているようにもあまり思えない。

 

あくまで一つの仮説なので外れている可能性の方が高いだろうが、なぜ光文社はこの本を売れる(もしくは押売りしたい)と思ったのか?考えれば考えるほどよく分からない。

 

 

◆「ふつうの人+α」を登用する中公新書ラクレ

新書の主な書き手は学者・専門家若しくは有名人である。では、「ふつうの人」が書いた新書はないのかというとそういうわけでもない。

 

探検したところ、「ふつうの人+α」を登用する新書レーベルを発見した。

 

それが中公新書ラクレである。最近の本で代表例を挙げてみよう。

 

・税務署員だけのヒミツの節税術 http://amzn.to/12piheE

 →大村大次郎(元国税専門官) 

・公務員だけのヒミツのサバイバル術 http://amzn.to/14aHBCX

 →中野雅至(市役所職員→国家公務員→大学教員)

・ぷらり日本全国「語源遺産」の旅 http://amzn.to/13fwGH7

 →わぐりたかし(放送作家、日本唯一の語源ハンター)

 

最近のトレンドとして役人、といっても中央官僚みたいなエライ人ではなく、ふつうの公務員で本を出す人が増える潮流にあるように思う。昔、生活保護関連のことを調べようと思って買った本の著者が現役職員であったということもある。行政は誰にとっても身近でしかも意外に知られていないことが多い分野だ。潜在的ニーズはまだまだあるに違いない。

後者のようにマニアックだけど手堅い需要があることに探究心をもっている人も本を出せるパターンだと考える。自分もお金に余裕があれば買ってしまいそうだった。

 

 

自分はどう考えても「ふつうの人」だ。そりゃ頭はふつうの人よりはいいけれども天才ではない。誰にも負けない専門性があるわけでもなく、自意識をこじらせ気味の、若いだけの小僧である。

でも、死ぬまでに1冊でもいいから本を書きたいというちょっとした野望はある。そのためには、どうやったら手にとって貰える本が書けるのかという難題に取り組む必要がありそうだ。

 

 

 

!!ばっ!!<おしまいの合図>!!ばっ!!