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yamachan blog  (社会派うどん人の日常)

コシのつよいうどんのような、歯ごたえのある記事をお届けします。

就職マニュアル本にみるセクシャルハラスメント

労働・人事全般

まずは次の短文を読んでいただきたい。

 

<私の面接体験記>

テレビ局で、面接が終わって、部屋を出ようとドアノブに手をかけた瞬間 、「ところで、最近セックスしたのはいつ?」と聞かれた。もう終わったかと油断していたので動転してしまった。

ドア際で質問がくるので要注意!!

 

大衆週刊誌の読者投稿かと思われただろう。

 

答えは否。

1990年から刊行され続けている「面接の達人シリーズ」(中谷彰宏)のうちの一冊、「面接の達人:面接で通る奴面接で落ちる奴 1992」(*1)の巻末にある、就職活動生向けのアンケート例文である。

(*1) 発行は1991年3月。面接マニュアル本やリクナビなどのWEBサイトの年度表記は、発行年ではなく利用者が就職する年を用いる習わし。

 

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念のためいっておくが、読者の面接体験談を次年度以降に反映させるためのアンケート例文のため実話ではない。だが、直球160kmのセクハラ文章を載せるような書籍が就職活動のバイブル(*2)として崇められていたと想像すると、ぞっとする。

(*2)1990年代の就活マニュアル本は、本書と「絶対内定(杉村太郎)」がリードしていた。

 

 

ただ、セクハラについて考える場合、時代状況を考慮せねばフェアではないだろう。

セクハラは、過去に新語・流行語大賞の新語部門で金賞(大賞に相当)に選ばれている。受賞年は1989年。著書の発行年は1991年3月。

 

面接本は時代を映す一つの鏡である。セクハラという言葉が世に出てきて間もない時期で、企業のセクハラ問題における対応も今では考えられないほど甘かったのだろう。

だが、セクハラ対策が浸透していないという時代状況と、なぜこれをアンケート例文としたのかということとは別問題だ。セクハラをされても動揺しないことが女性(この例文はおそらく女性を想定している)の必須スキルだと筆者が考えていると解釈されても仕方がない。

 

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つづいて、本シリーズの面接Q&Aもセクハラと訴えられかねない質問が多数掲載されている。ここでは「面接の達人'94 問題集 女子編」の章立てをそのまま引用しよう。なお、問題集編は、男子編・女子編に分かれており、以下は女性版のみに掲載されているものである。

 

心の準備をしてから読んでほしい。

 

 第4部 ◯ 女性に必ず聞かれる質問で通る人落ちる人

・結婚は何歳くらいでしたいですか

・子どもができたら仕事はどうしますか

・結婚したら仕事はどうしますか

・家庭と仕事の両立は大変ですよ

・得意な料理はなんですか

・理想の男性像は

・企業の中で女性はどのような役割をしていくべきだと思いますか

・お茶汲みやコピー取りをどう思いますか

・デートの約束があるとき、残業を命じられたらどうしますか

・アシスタントでもできますか

・キャリアウーマンについてどう思いますか

・あなたを花にたとえるとどう思いますか

・外泊したことがありますか

・お化粧にはどのくらい時間をかけますか

・男女交際についてのあなたの考えを話してください

・どうして一人暮らしなのですか

・一般職と総合職のどちらが希望ですか

・四年制でなく短大を選んだ理由はなんですか

 

結婚/出産に関する質問から、完全にプライベートな事柄まで列挙されている。私が女性だったとしたら、"どうして一人暮らしなのですか"と聞かれた日には、面接官に"あなた方はなぜそのような質問をしたのですか。採用する上で重要な事柄とはとても思えません。理由を明確に述べてください"と逆質問して途中退席するだろう。

 

1990年代初頭の面接シーンにおいて、本当に "女性に必ず聞かれる質問" とまでいえるのか??という疑問は湧いてくるものの、20年前における企業人事の女性観が反映されていることは確かだろう。

 

 

しかしながら、20年間で企業人事における女性対応はまっとうな方向へと変わってきた。男女雇用機会均等法に"セクハラの防止に配慮する義務"という条項が新設されたのが1999年。それが"セクハラの防止措置をとる義務"に格上げされたのが2007年である。それに対応する形で、企業もセクハラを防止する体制づくり・社内啓発を行ってきた。

 

現在であれば、少なくとも真っ当な企業であれば、採用プロセスにおいて、結婚/出産を過剰に意識した質問や性別役割分業を自明のものとしたような質問はなされていないだろう。世の中はすこしづつではあるがよくなっている。

 

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そこで私は思いついた。同じ面接マニュアル本を時系列で追っていくことで、採用における企業の女性対応の変遷が分かるのではないかと。

面接の達人'93 問題集女子編」から「面接の達人2011 面接・エントリーシート 問題集女子編」までの19冊を全てチェックしたのだが……

 

その結果、私は気づいてしまった。

この就活本の記述は、19年間通してほとんど変化がないということに。

 

・ 先ほどの"女性に必ず聞かれる質問"の18項目は、2011年版まで完全一致。

・模範解答とされる著者のコメントもほぼ同様。

・2011年版でも男女分業制を自明としたようなコメントあり。

 

就職マニュアルは年度で版が変わっても、変更点がほとんどないことに薄々気づいていたが、まさかこれほどまでとは思わなかった。あまりに酷い、酷すぎる。

 

 

 

中谷彰宏のコノヤロー!!出版社も仕事しろ!!!(呆)