職場でお宝発掘〜芸人ヒロシは労働局で救われるのか〜
ある日、職場でパンフレット整理をしていたら、お宝を発掘!
これは役所にしてはハイセンスなクリアファイル広告だ!
”ヒロシです。悩んでいるだけでは、いかんとです。”
一発屋芸人の輩出にかけては右に出る者がいない、サンミュージック。そこに所属して一発だけかましたことはあります。ヒロシです。
彼を最後にテレビで見たのは、自分が高校生の頃だぞ…と思って、ネットを徘徊しているうちに、このお役所広報活動は2005年のものだということが判明!
今もHPに顔写真が掲載されているということは、クビになってはないんやな、と一安心。
と、本題に戻ろう。
この広告の目的は、労働基準監督署及びその上部機関である労働局が開設する総合労働相談について周知することである。また、この総合労働相談は、個別労働紛争の解決に促進する法律に基づいて作られた、個別労働紛争解決機関の一つである。
→What's 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律??
人事労務管理の個別化や雇用形態の変化等に伴い、労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争(以下「個別労働紛争」といいます。)が増加しています。
紛争の最終的解決手段としては裁判制度がありますが、それには多くの時間と費用がかかってしまいます。
また、職場慣行を踏まえた円満な解決を図るため、都道府県労働局において、無料で個別労働紛争の解決援助サービスを提供し、個別労働紛争の未然防止、迅速な解決を促進することを目的として、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行され、この法律に基づいて、次の制度が用意されています。
① 総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談
② 都道府県労働局長による助言・指導
③ 紛争調停委員会によるあっせん
(*出典:厚生労働省HP)
リンク先のHPを見ても「あっせん」というのがピンと来ないかもしれないが、これは簡単に言うと、裁判と比較し「早くて、簡単で、しかもタダ」で労働紛争を解決することを可能とする制度である。いいこと尽くめのようだが、裁判判決と異なり強制力がないことには留意したい。
では、空想実験をしてみよう。(あくまで空想実験)
芸人ヒロシはサンミュージックをさしたる理由もなくクビになったとする。困ったヒロシはかつて自分が広告塔になっていた個別労働紛争解決制度のことを思い出す。(悩んでいるだけでは、いかんとです。こんな解雇は無効とです。。)
では、彼は総合労働相談コーナーでどのような扱いをうけるのだろうか?
残念ながら、クビになった彼に対して労働局ができることは限りなくゼロに近いだろう。労働者を守るためのお役所なんだろ(怒)と思われるだろう。
種明かしをすると、法律的には、彼のような芸能人は労働基準法の保護対象である労働者でないと判断されるケースが多いからである。
そう、働く人すべてが法律上の労働者とは見做されるわけではない。例えば、プロ野球選手。(*1)
この事例だと、芸人とプロダクションの契約は労働契約ではなく、専属出演契約といった形のものが多いからだ。
言い換えれば、労働法の分野でなく、民法の契約(債権)の分野。
労働行政が彼にできることは、総合労働相談コーナーでじっくり話を聞いてあげて、契約書等を確認した上で、法テラスなどの無料弁護士相談コーナーを紹介してあげることにとどまるだろうなあ。
ヒロシ、ミイラ取りがミイラにならないように、ガンバレ。。
応援しとるばい。
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(*1) プロ野球選手は労基法上の労働者ではないが、労組法上の労働者ではある。プロ野球選手がFA権等の選手の権利を集団交渉していたことは記憶に新しい。